東京新聞webより
戦後の横浜で、娼婦(しょうふ)として街に立ち続けた「ハマのメリーさん」をモデルにした一人芝居を二十五年にわたり演じてきた俳優五大路子さん(68)=横浜市=が、この間の歩みをつづった「Rosa 横浜ローザ、25年目の手紙」を出版した。「時代に翻弄(ほんろう)されるその姿から、生きることとは何かを考えてもらいたい」と訴えかけている。(米田怜央)
白塗りの顔に純白のドレス姿で市内に立つメリーさんに、五大さんが初めて出会ったのは一九九一年。メリーさんと視線を交わすと「私の生きてきた今までをどう思うの」と訴えているように感じ、心を揺さぶられたという。
街中で取材を進め、九六年に一人芝居「横浜ローザ」を初めて演じた。「戦争の苦しさを知らない自分が演じていいのか」と悩みながら国内で公演を重ね、憧れのニューヨークへ進出した。著書では次第に変化していく演出や心境も明かしている。
例年、終戦記念日に合わせて行ってきた公演は今年、新型コロナウイルスの影響で中止になった。それでも「困難を経てどんなローザが生まれるか楽しみ」と前向きだ。「本を読んで、毎年変わる生の舞台に興味を持ってもらえたら」と話す。有隣堂、千六百五十円。